【実話】踊りが止まらない…人々を死ぬまで踊らせた謎の病「ダンシング・ペスト」
集団心因性疾患という謎

ダンシング・ペストは、「集団心因性疾患」の驚くべき一例だったのかもしれません。単一の病原体や毒ではなく、心理的なストレスによって引き起こされ、増幅された、本物の身体的な集団発生です。
奇妙な考えに聞こえるかもしれません。でも、人間の神経系が予期や恐怖、社会的な圧力にどれほど強く反応するかを考えれば、話は変わってきます。
ストラスブールに暮らす人々は、すでに極度のストレスにさらされていました。飢饉と病気によって、人々は心身ともに危機に弱い状態になっていたのです。宗教的な信仰も重要な役割を果たしていました。住民の中には、聖ウィトゥスが罰として人々に踊りを強いることがあると信じる人もいたのです。
ひとりが体を止められずに踊り始めたとき、ほかの人々もその行動を同じ文化的な枠組みで解釈したのかもしれません。そして恐怖と予期が、コミュニティ全体へと広がっていった可能性があります。
心理的な圧力がかかると、体は驚くほど強い身体症状を生み出すことがあります。震え、発作、麻痺、失神、止められない動き、さらには知覚の変化までもが、一般的な感染症が原因でなくても起こりうるのです。極度のストレスにさらされた密集したコミュニティでは、誰かが恐ろしい身体症状に見舞われるのを目にすること自体が、強力な引き金になりえたのです。